協会イベント情報
  過去掲載分<その2>


介護保険フォーラム2002開催記

全体を通して

 平成14年12月8日東京都小平市において、「介護保険フォーラム2002」が開催された。当日は小雨の降る中、ケアマネージャーを中心に、看護師、保健士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、一般市民等、様々な立場から昨年を超える411名の参加があった。介護保険導入から3年近くが経過し、来年度には制度の見直しが予定され、関係者の強い関心が集まる中、内容の充実した講演と白熱したパネルディスカッションに、大いに盛り上がる一日となった。

 

特別講演1  
介護保険制度の展望と課題 〜第2期介護保険事業計画を中心に〜

厚生労働省老健局計画課老人保健福祉計画
石田光広氏

 厚生労働省老健局計画課老人保健福祉計画官の石田光広氏による講演では、介護保険がスタートしてから2年間の様々な貴重なデータがわかりやすく示され、また現在の介護保険の問題点と今後の展望について具体的な説明があった。在宅生活を続けるために、通所リハビリテーションにおける個別リハビリテーションの重要性が指摘され、介護報酬については理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による個別リハビリテーションの算定が可能になる、という見直し案が示され、リハビリテーション関係者には朗報であった。また老人保健施設については、リハビリテーションスタッフの人数が多い施設ほど在宅復帰率が高いというデータが示され、「自立支援に向けたリハビリテーションを積極的に取り組んでいる施設を評価する」という方向で論議されていることが紹介された。このことから、今後さらに老人保健施設での理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の就業が拡大する可能性が示された。(会場で提示されたスライドはこちら)

 

特別講演2   介護保険と私たちの暮らし 

NHK解説員 村田幸子氏

 NHK解説委員の村田幸子氏の講演は、実際の介護保険サービス利用現場で起こっている問題についてわかりやすく説明され、またサービス提供者に求められることについても具体的な提言があり、興味深い内容であった。
 サービス現場での利用者の意識は確実に変わってきており、保険料を払うことでコスト意識が生まれているという。例えば、現在の制度では介護度の高い人ほど料金の自己負担が高くなるが、全く同じ内容のデイサービスを受けたのに、払う金額が異なることに納得できない、と訴えた利用者がいたそうだ。サービス提供者には、このような場面で適切な説明のできる力が求められている。支払った金額に見合う質の高いサービスを提供していくために、専門性や倫理観がもちろん重要でだが、利用者の生きている世界や心をどれだけ理解できるかということが大切であり、「専門以外の文化や社会情勢について学び、自分の世界を広げてください」というお話で締めくくられた。

 

パネルディスカッション

 パネリストは5名。介護保険利用者の橋本一夫氏(全国失語症友の会連合会理事長)、介護支援専門員の天野久美子氏(東京都介護支援専門員研究協議会会長)、理学療法士の望月修氏(文京区向丘高齢者サービスセンター)、作業療法士の堀口貞子氏(弘済ケアセンター)、言語聴覚士の半田理恵子氏(桜新町リハビリテーションクリニック)により、それぞれの立場から介護保険制度の実情や問題点、現場での実践の様子が紹介された。発表に続くパネルディスカッションでは、桜新町リハビリテーションクリニック院長の長谷川幹氏が司会を担当され、議論をリードされた。

 

リハビリテーションをもっと身近に〜介護保険利用者の立場から〜 

全国失語症友の会連合会理事長 橋本一夫氏

 全国失語症友の会連合会理事長の橋本一夫氏は、言語障害者の代表として、訪問リハビリに言語聴覚士を位置付けて、もっと言語聴覚士による言語訓練を受けられるような体制が必要であることを訴えた。さらに、身体機能障害や言語障害についての知識を持ち、障害者の心理面にも対応できるケアマネージャーが必要であると述べ、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のケアマネージャーが増えて欲しい、と発言された。

 

ケアマネージメントとリハビリテーション

東京都介護支援専門員研究協議会会長 介護支援専門員 天野久美子氏

 都内のケアマネージャー対象に行ったアンケート結果を示し、今後のケアマネージメントで問われるのはサービスの質であることを指摘された。地域によりサービスの種類と質に差があること、医療との連携が不十分であること、介護保険サービス提供者の間で共通のリハビリテーションの目的と意義が持てていないことなどが、現状における問題点であると述べられた。

 

通所や訪問における理学療法士の役割について 

    文京区立向丘高齢者在宅サービスセンター 理学療法士 望月修氏

 在宅PTが現場でどのような仕事をしているか、紹介した。個別訓練、他職種との連携の重要性が示された。また、現在人権費用持ち出しとなっており、介護保険制度でPTを雇用しても経営不利とならないようなシステム作り、人員配置基準の見直しを求めていく必要があると発言された。

 

リハビリテーションをもっと身近に〜作業療法士の立場から〜

弘済ケアセンター 作業療法士 堀口貞子氏

 地域におけるリハビリテーションの目的は「地域生活における自立支援」であることを指摘された。作業療法は「生活構築のためのエネルギー」を生み出すものであるとし、お茶入れ・料理・手芸・大工・劇など長期間継続可能な活動を行っていくようにしている。利用者一人一人に対して、その人らしい生活が行えるよう、支援していくことが大切であると述べられた。

 

リハビリテーションをもっと身近に〜言語聴覚士の立場から〜

桜新町リハビリテーションクリニック 言語聴覚士 半田理恵子氏

 日本言語聴覚士協会が行った「訪問言語聴覚療法の効果についての調査」の結果を報告。訪問言語聴覚療法を行うことにより、利用者に伝えようとする意欲が出て、明るくなり、人との交流、趣味が増えるなど、効果があったことが示された。また家族にとっても、コミュニケーション障害についての理解が進んだこと、相談相手ができ、希望が持てるようになり、ストレスが少なくなるなど、良い変化がみられたことが示された。

質疑応答

 会場からは多数の質問が寄せられ、活発なディスカッションが行われた。特に失語症を持つ方とのやりとりや痴呆のある方への対処に関する質問等、コミュニケーションに関する質問が多く寄せられ、介護保険のサービス現場で大きな問題となっていることが浮き彫りにされた。

 

「介護保険フォーラム 2002」を振り返って

記録担当 日本言語聴覚士協会 森田秋子

 盛況のうちに、「介護保険フォーラム 2002」が終了した。私個人にとっても学ぶことの多い、実に内容の充実した企画であった。様々な問題を抱えながらも、介護保険は、利用者自身が選択し決定していくシステムとして福祉の根幹を支える制度となりつつあり、サービス提供者側に効率良く質の高いサービスを提供する体制作りが求められている。その中で制度として何が重要なのか、どこを充実させていくべきか、行政に正しい選択をしていただくことが必要不可欠であり、現場と行政が一体となり現状を明らかにしていく「介護保険フォーラム」の試みは、実に有意義であったと思う。
 言語聴覚士として、遅ればせながらこのようなイベントに理学療法士、作業療法士と肩を並べて参加できたことは、大変嬉しいことであった。このようなイベントを行ってきた実績は、理学療法士、作業療法士に到底及ばず、教えていただくことばかり多かったが、昨年、今年の「介護保険フォーラム」を3協会共催で実現できたことは、今後の3協会の連携につながり、大きな意義を持つと感じる。今回一緒に活動させていただいた理学療法士・作業療法士協会の皆様、また、企画運営にまで御協力いただいた東京都介護支援専門員研究協議会の皆様、どうもありがとうございました。